先月の下旬、ワシントン条約締約国会議が開かれていました。ワシントン条約というのは、ご存じだと思いますが、絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約です。
今回の会議では、日本の象牙取り引きに関して厳しい意見がでたそうです。なんでも、象牙の売買をしているのは、日本を含むわずかな国だそうです。
象牙のことは以前から気になっていました。それは楽器に象牙がよく使われているからです。
実は三味線では、糸巻きや撥(ばち)に使われているのです。代わりの材料では、音に影響があると仰る三味線奏者もいます。
ピアノにも使われていました。現在(現代)のピアノは19世紀になってから作られるようになり、鍵盤に象牙を使うようになります。もちろん、現在では人工象牙などに置き換わっています。
象牙に限らず、楽器は生きものからのいろんな材料で作られています。今のようにデジタルで音が作れるわけでもない時代では、身の回りの材料で楽器を作らざるをえません。
ところで今回話題になった、象牙取り引き自体大きな問題ですが、取り引きがなくなると、それはそれで大きな問題が出てきます。
一つは象牙加工技術が途絶えてしまう問題です。もう一つ大きな問題があります。それは象牙を使った物品の取り引きも厳しくなる可能性があるのです。例えば、象牙が使われている中古の三味線を譲るのも、今までのようにいかなくなる可能性があるのです。
わたしたち人間は、自然に寄り添いながら生きていかなくてはいけません。そうしなければ、その結果は人間に返ってきます。
楽器の世界も、そんな生き方に合った解答が見つかればと、切に思います。
来月も素材のお話しを。