三味線製作に危機

東京は八王子に東京和楽器という会社があります。この会社は、日本有数の津軽三味線の老舗メーカーなのです。
今回のコロナ騒動で、邦楽の世界もいろんな影響があったのはご存じの通りです。
演奏ができない、お稽古もできない、未だに一部の団体などでは練習ができないままの状態だということです。演奏する人たちもたいへんなのですが、気がついたら、楽器を製作する方たちも大変なことになっていたのですね。
この東京和楽器では国内で作られている三味線の6割を手がけているほかに、三味線奏者にも人気の螺旋の糸巻きや、緩まない糸巻きなど、独自の工夫を凝らした三味線も制作している事でも知られています。また、よそで作られた三味線の修理を請け負うなど、今や三味線の世界ではなくてならない会社になっているのです。
その東京和楽器が8月半ばに廃業するという衝撃的なニュースが伝えられたのです。ただでさえ邦楽器の世界は、市場が縮小しているところへ、今回の騒動で演奏できなくなったことで、注文や修理依頼も激減。追い打ちをかけられた感じです。
都内の三味線を取り扱う邦楽器店では、三味線を多めに発注したとか、和楽器バンドがライブ配信などを通して募金を募ったり(この募金は現在は終了しています)、レコード会社も収益の一部を寄付するなど、支援の手が伸びています。
その結果、とりあえず東京和楽器は年内の営業は続けるということになったそうです。
今回のことで、音楽なんて要るの?要らないんじゃないの?という声まで聞かれたときにはさすがに悲しい気持ちになりました。今まさに、わたしたちの文化力が試されているのではないでしょうか。
不肖、わたくしもとある音楽団体に、わずかばかりの寄付をさせていただきました。
ここを乗り切るために今は、演奏者、演奏を聴かせていただく聴衆などなど、それぞれの立場でできることを、どんな些細なことでもやることかなと、そう思っています。
みんなでこの災禍を乗り越えて参りましょう。その先に素晴らしい世界があることを信じて。来年の今頃には、三味線を存分に弾けるようになると信じて。